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投稿日:2017/03/29

木のある暮らし展~旅する日本の森と産地~」開催しました

 

3月29日、大阪淀屋橋駅近くのギャラリーを貸し切り、 Clubプレミアム国産材、12の木材産地共催でお届けするライフスタイル展示会 「木のある暮らし展~旅する日本の森と産地~」を開催しました。    

 

~~~イベント概要~~~

■開催日時:2017年3月29日(水)10:00~17:00

■会場:大阪市中央区高麗橋3-1-8カルボ高麗橋ビル1F 高麗橋BLACKBOX

■参加無料・申込不要

■プログラム

①産地からの空間提案展示(常時展示)

②特別無料セミナー「プレミアム国産材で工務店経営をプレミアム化するセミナー

講師:(株)古川ちいきの総合研究所 古川大輔

③トークショー「国産材LIVE!」(毎時開催)

 

 

過去の開催イベントに関するブログはこちらから=== === === === === ===

・第4回産地共催交流セミナー(2015年):https://club-premium-wood.jp/?p=837

・Japan Home & Building Show 2013(2013年):https://club-premium-wood.jp/?p=671

 

 


産地共催のイベントとしては今回で5度目となる今回は、 今までのプレゼン・セミナー中心に内容から一転、空間提案を行うブース展示をメインとしました。

1日を通して、100名を超える方にお越しいただき、複数のメディア取材もあり、 多くの出会いある賑やかな春の1日となりました。

 

================= 【1】ブース展示 =================

 

 

“木”は全て同じものなのでしょうか? スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ、そしてさまざまな広葉樹と、樹種によって木目やかたさなどの材質が違います。また、同じ樹種でも、品種や育った山の自然環境、そして育て方による産地のバラエティがあります。

十人十色という言葉があるように、木材にも一本一本、地域ごとの性格があり、様々な表情を見せてくれる奥深い世界があるのです。また、柱、床、壁、家具、小物と使い方によっても雰囲気は変わります。

そんな多様性のおもしろさを感じさせてくれるブースをのぞいてみましょう。

 

 

===J1メンバー===

 

桧の可能性を無限に広げる。【影山木材株式会社(富士山麓)】

「Ur(ユーアール)」という国産ヒノキを使用した壁材を中心とした空間提案。 U型の溝を施した壁材とr型の金具の付いた取付家具を組み合わせて、壁を自由なレイアウト空間に変えます。

 

木を使う社会の仕組みをつくる。【ソマミチ(信州松本)】

全国でも生産地が一部に限られる「カラマツ」を使用した外壁材「T&Tパネル」を主体としたブース。 ブルーステイン(赤松)を使ったスツールやカラマツのカッティングボードなど、暮らしのアイテムも多数。

 

希少価値の高い国産地松を島根より【竹下木材有限会社(石見出雲)】

地松に特化した羽目板や数種類の厚さのフローリングを展示。。 地松の素材感が引き立つシンプルisベストな展示となりました。

 

癒しと信仰の高野山、千二百年の森から。【高野山寺領森林組合(高野山)】

高野山真言宗総本山・金剛峯寺が所有する森林から産出される「高野霊木」を使用した、柱、テーブル、フローリング、ミニ床の間をご紹介。 森林セラピーもおすすめの高野山、その魅力を映像で伝えています。

 

コンパクトな流通で森からの地域づくり【ばうむ合同会社(土佐嶺北)】

多くのブースが建材を中心としている中、「もくレース」コースターをはじめとした、木製小物を展開。 木材を提供している自伐林家もいっしょにPR。

 

日本一おもしろい材木屋ベンチャー【株式会社西粟倉・森の学校(岡山西粟倉)】

大ヒット商品「ユカハリ」の複数バリエーションに、新商品の「カベハリ」も加わりユニークな空間に。 家具、小物も含め、一般のお客様も使いやすい商品がずらりと並んだブース展示になりました。

 

晴れの日も日常も、五木のある暮らし。【飛騨五木株式会社(飛騨高山)】

スギ、ヒノキ、クリ、ケヤキ、ヒメコマツの5樹種の木が社名にもなっている「飛騨五木」。 とにかく多くのアイデア商品がラインナップ。衣食住に木のある暮らしを提案しました。

 

東濃発、木材業界のパイオニア【株式会社山共(岐阜東白川)】

パネル、チラシ、映像のみで、木材製品をあえて持ち込まない展示。あとは社長が語ります! 自らの熱い想いを語ることで産地、木材をPRする独自のスタイルの展示でした。

 

日本最古の林業から、上質な素材を。【一般社団法人吉野かわかみ社中(吉野川上)】

吉野林業のメッカ、川上村からの出展。柾目が映える扉をメインに、柱、フローリング、どの製品を見ても緻密な年輪が刻まれています。 日本三大人工美林のパワーを感じさせる空間提案でした。

 

===J2メンバー===

今回は、Clubプレミアム国産材のメンバー以外にも、次なるプレミアム産地として「J2」出展枠を設けました。 3つの産地をご紹介します。

 

【岩泉の明日の林業をつくる会(岩手岩泉)】

昨年8月の台風10号被害の復興支援として特別出展をいただきました。岩泉町は広葉樹×FSC森林認証が魅力の産地。 今回は復興プロジェクトで制作したちゃぶ台と、広葉樹ユカハリを展示。シンボルマークも人気のブースとなりました。

 

【木原木材店(兵庫播州)】

「製材をしない製材屋です!」が合言葉。関西随一の丸棒工場からの出展です。 丸棒1つとっても加工の幅は広い。それをうまくブースで表現しています。

 

【有限会社平田木材店(福井高浜)】

サーファーな雰囲気が漂う展示。ブルーフラッグという浜辺の国際認証を取得している福井県高浜町から 京都材と若狭材のブレンド「京若狭材」をPR。「木」×「海」のユニークな展示でした。

 

「同じ木材、樹種でも全く違う、それがとてもオモシロく、興味深い。」 この言葉は、長年木材に関わってきた方、木材の事は今まで良く知らなかったという方まで多くの来場者から頂いたご感想です。

午前10時に開場したイベントは午後5時の閉会まで、途切れることなく各ブースから熱のこもった会話が飛び交い、 終始賑やかな展示会となりました。

 

 

================ 【2】トークショー「国産材LIVE!」 ================

樹種によって、産地によって、さまざまな表情を見せる木材。確かに間違いありません。 さらに、それを届ける‟人”の存在が、より木材を魅力的にするのです。

同会場のステージで各産地の出展者から、木材への想い、今までの背景、取り組みを5~10分で語っていただきました。

 

 

 

 

 

 

産地の熱い想いが伝わるセンスの光るプレゼンが繰り広げられ、 プレゼンの世界では有名なTEDカンファレンスにも負けない、まさに林業版TEDを体現したひと時でした。

 

 

================ 【3】セミナー「プレミアム国産材で工務店経営をプレミアム化するセミナー」by古川大輔 ================  

午前の部、午後の部それぞれの締めくくりとして、 弊社代表古川より、木材製品を実際に扱う工務店の方に向けたセミナーを開催しました。

まず、林業、製材の現場を見たことが無い工務店の方はいますか?と聞くと多くの人の手が挙がるのが現状です。

自分が扱っている製品はもちろん見るが、実際に作られている現場は知らない、見たことがない、という方も多いのです。

しかしながら、林業と消費者、産地と暮らしをつなげることが出来るのも、地場工務店の魅力です。

そのうえで、林業、製材業へのアプローチの必要性、絞り込んだスタイル・プラン提案の重要性など、基本的な経営から応用まで、10個のポイントを中心にお伝えしました。

プレミアム工務店になるためには、どのようなことが必要なのか、存分に知っていただき、 1つでも実際のアクションに繋げて頂き、地域の林業製材業との繋がりが広がれば幸いです。

 

 

================ 【4】交流会・林業Bar ================

 

会場での会話に華を添えるドリンクもご提供。 「お酒を通じて、山や木の世界に出会う」をコンセプトに活動している、「林業BAR」が駆けつけてくれました。

バーテンダーは、日頃から木材や建築に携わりながら、ユニークなカクテルで出張BARを展開している竹内優二氏です。

今回は日中開催のために、ノンアルコールドリンクの新メニューも開発していただきました。   木材は、見て、触れて楽しむだけではないのです。

香りを楽しみ、味わうこともできる。 展示会、トークショーの合間にほっと一息、五感全てで楽しんでいただけるイベントとなったのではないでしょうか。

 

展示終了後は、出展者と来場者の交流会を開催しました。 森と木をめぐる話はいつまでも尽きません。

さて、「木のある暮らし展~旅する日本の森と産地~」1日限定のイベントは終了しましたが、 ご興味を持たれた方は、出展者が取り扱う商品を‟お取り寄せ”していただけます。

 

A:お気に入り産地から一棟分お取り寄せ

B:イチオシ商品をリピート使用

C:色々なプレミアム産地から部材を集めてそろえる

 

と3種類のお取り寄せパターン、あなたはどれがお好みですか?

また、   D:産地と一緒に商品を作る!   という選択肢も実はあり、「この人と組みたい!」という出会いから可能性を広げていただきたいと思います。

さっそく、展示会終了後に、具体的な商談やご相談が相次ぎました。 ご興味がある設計・工務店の方、もちろん一般の皆様もお気軽にご相談ください。

 

 

お問い合わせ・ご相談はClubプレミアム国産材HPページお問い合わせフォームから===

https://club-premium-wood.jp/?page_id=104/

 

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これからも日本全国、プレミアム産地は旅をしながら木のある暮らしをお届け致します。 また皆さまにお会いできますこと、新しい出会いが生まれること、楽しみにしております。

 

 

コラム
投稿日:2017/03/29

最近の林業&地域コンサルで思っていること。

 

【文章】

地域再生・森林再生コンサルタント日記 より

 

【著者】

古川 大輔 Daisuke Furukawa

株式会社古川ちいきの総合研究所 代表取締役 / コンサルタント

 

 

 

昨日(9/14)、兵庫県で「災害に強い森づくり推進大会」の基調講演をさせて頂きました。

県民緑税(森林税)の利用による、ボランティアからプロに渡る森づくりの事例発表があり、多面的機能の発揮と科学的データに基づいた検証もされており、私自身ももっと「森づくり」の実践をせねばと良い機会になりました。
それを受け、私は、生態系の多様性の為にはある程度の自然災害を是とする中程度攪乱説や、農業土木の大切さとして信玄堤を例にしつつ、歴史学、生態学から学びながら、その100年の災害も全て想定内として「災害と共に森で生きる(暮らす)知恵ある人づくり」という視点が肝要ではないかとし、著書「森ではたらく!」や「弊社の支援事例」を紹介しながら話をさせて頂きました。

その人づくりという視点で、最近思うに、全国の森林・林業ビジョン等の概要をよくみる見ると、その具体的プランにおいて、資源量や生産量、自給率や県産材シェアなどの数値しかなく、本来あるべくマーケットボリューム(市場規模)、シェア、売上目標、企業ベースでは、粗利率、労働分配率、雇用数、目標年収、といった基本がまったくなくて顧客不在現象があり、悲しくなることがあります。

 

 

もちろん信条は「理念なき利益は犯罪、利益なき理念は寝言」ですが、地方創生、地域づくり、地域活性化というものに関しても、同じく、指標を間違えてしまうケースが多いように思います。

余談ですが、全国の林業生産(原木)の市場規模は約2000億円。全国では戦後は昭和55年が一番儲かっていて1兆円産業でしたが、今は5分の1のボリュームになっています。ちなみに最盛期に対して、吉野地域は約10分の1、北山地域(床柱系)は約20分の1になっています。それでも、当社業界向けアンケートによると、特定1~2割のプレーヤーは顧客&新市場を伸ばしていますが、そういう方々は、ビジネスの基本に忠実ということと思います。

で、話戻りまして、やはり、事業者にとって、まず大事なのは顧客づくり、そして利益(特にこの業界では粗利)づくりであります。

 

 

利益に関していえば、だいだい、1000円のラーメンを500円の半額セールで売ったら、2倍を売らなきゃいけないって思ってる人が多すぎます。原価が400円だったら、本来600円の粗利が100円になるんだから、2倍じゃなくて6倍売らなきゃいけないんだ!っていう、経営の当たり前のことがわからない人が林政をつかさどってたりします。(もちろんキャンペーンとして将来の見込み顧客を増やすイベントだという半額セールだからよいというのは置いておきましょう。)

だから、指標を間違えてしまうのです。

 

 

先日も、弊社の研究会で、某県の林務職員の平均年収×人数を(あえて民間企業で雇うとしたら)どのくらいの林業・製材業の売上(あるいは材積)が必要かという計算をしたばかり。林業に掛かる行政職員は、①ひとつ準公務員としての林業という業務を行い計画経済のような動きをするか、②もうひとつ脱藩職員系には、ぜひとも早々に「ビジネス」にチャレンジしましょうと、ある方の言葉をつかえば「行政より公益性の高い株式会社」を作るのがいいと思います。

 

 

ある林業会社は30代で経験10年ほど、社員全員4~5名が年収400万、ほぼ補助金を使っていない。(条件をある限定的にしているが)、経営者いわく「どれだけ売れて、どれだけ経費が掛かるか計算して、仕事せい!赤字だったら山から帰ってくるな!」っていっている。これだけのことだという敏腕経営者。

で、私は数々の林業・製材業の企業のPL、BS等見せて頂く機会が多いのですが、広告宣伝費率はほぼゼロ。申し訳程度に年度決算する際に、2万円とか書いてあるくらい。さらに研修費・開発費も計画的な計上をしていない。補助金があってから開発しようっていうところが多い。どちらも、本来は得られるべく粗利から使うものです。

 

 

業界特有ですが、どの補助金を売上計上にするか雑収入計上にするかも、自社の経営計画ではその仕分けによって、未来の目標が変わります。私は補助金をある軸で3つに仕分し、経営計画に反映するという支援をしています。(ちなみに行政用語の森林経営計画とは違い、いわゆる一般的な企業の経営計画のことです。)だから、すべて補助金ありきであるといって進むと、市場から撤退すべくサービス力と技術力のないプレーヤーも過保護に残ってしまっていることも否めない。ゆえに、M&Aや営業権譲渡などをしていけばいいのですが、地域のビジネス習慣があると難しい。だったら、せめて屋号は残し、特段の受注力をもち、新たな流通システムを構築してあげて、その技術と誇りをつぶさない方法もありましょう。そうしているクライアントもおりますが、たいていは、座して死を待つのみという状況は、それにしてももったいないと思います。

 

 

戻って、利益。
吉野林業の中興の祖の土倉庄三郎は、利益の3分1は国に、3分の1は教育に、3分の1は事業にと、いう言葉を残されました。だけど、その前に、そもそも利益って何っ!?て状態が蔓延しています。だいたい毎月ATMに同じお金が入るのが当たり前だと思っている人では、理解は得られにくいと思いますが、コンセプトやビジョンがどうこう言うまえに、現場では、まず普通に「利益」を生み出す「経営」をすること。それがまず一歩。王道でいいんです。基本でいいんです。それができずで、せっかくの地域文化、伝統技術がなくなってしまう。大切な理念がなくなってしまう。悔しいことです。

 

 

これからの林業は、自伐、バイオマス、CLTだという人がいます。確かにそれもそうでしょう。しかし、それだけでない、どんな方法でもいい、どんな料理方法でもいいので、大事なのは「立地・規模・暖簾・商品・集客・アフター等」によって顧客に求められる、その自社の経営力です。それが、トータル林業、フリースタイル林業と思います。

最近は、同年代の経営者も増えていて、いわゆる以下の四則演算をすべてクリアしていて、利益を生み出し、またその利益を次の理念に向けて投資している事業者(仲間)も増えています。私自身も未熟でありますが、改めて、この次の10年戦う素地づくりが出来たらなと思っています。
<まとめ>
【林業四則演算】
(古い業界であれば、林業以外でも当てはまるんですが・・・)

 

Ⅰ.林業+α
林業(素材業)単体だけではなく、
顧客が喜ぶ、付加価値(潜在的ニーズ)をどう加えていくか。

 

Ⅱ.林業×β
林業という業種にこだわらず、
小売業、サービス業的な展開をし、
水平連携、垂直連携を掛け算できるかどうか。

 

Ⅲ.林業÷γ
経営力ということで分解できるかどうか。
商品(施業)力、集客力、営業力、組織力

そのなかで競合他社と比較し何を強化すべきか。

 

 

Ⅳ.林業-δ
どうしても取り除かなければならない
昔の商慣習や古い精神風土!

 

と、
昨日、私が兵庫県の講演で言いたかったのはこういう事でして、写真等でたくさんの事例をお見せしましたが、やっぱり「人」ですね。「経営」なんですね。そしてもちろん、一番大事なのは「安全性」ですけれどね。最近、製材関係で2か所も死亡事故の話をききました。社員の安全と家族の健康を願うことから、今日も明日も、よき未来に向けて改めて皆様ご指導ご鞭撻よろしくお願い致します。

 

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古川 大輔 Daisuke Furukawa

株式会社古川ちいきの総合研究所 代表取締役 / コンサルタント
twitter: @daisukefurukawa
blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記

 

新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。28歳で社会人に。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前の支援、高野山・高野霊木のプロデュース、経営実践研究会の実施などを行い、全国の林業・木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山 金剛峯寺境内案内人でもある。

 

コラム
投稿日:2017/03/29

林業と設計・工務店の連携、その理論と実践。~国産材、第2世代へ挑め!~

 

【著者】

古川 大輔 Daisuke Furukawa

株式会社古川ちいきの総合研究所 代表取締役 / コンサルタント

 

 

 

■ニッポンの林業と建築の現実。~まず、森を見て丸太を買ってみる~
「俺、きこり初めて見た!」と林業現場で大工が話す光景は、私にとって衝撃でした。鮨職人で「初めて、魚を釣っている人をみた!」という人はいないでしょう。それほどに大工職人や設計建築士が「林業」と遠くなってしまったことが、「(中間的)木造住宅」衰退の根源的な理由であるとみています。自ら森に行き、丸太を買ってさばいてみる、そこからが始まりだと思うのです。全国の設計士・工務店の方々こそが、身銭を切ってその体験をすることで、全てが工業化され得ない木の世界の魅力を知り、自らに製品規格に携わり、新たな事業企画をしていくその連携と行動により新時代を切り開けて行けるものと、私は考えています。

 

 

■住宅業界における国産材・第二世代とは?
いま住宅業界は、新建材・住宅部材による組立産業化が進み、誇張したストーリー(物語性)と欲求性を中心にした住まい(暮らし)のプロデュース業が市場を席巻しています。施工側の利便性重視の時代が進む一方で、国産材利活用の発展のため林業家と建築家のつながりの大切さを訴え、M’S設計の三澤氏、徳島の林業家の和田氏を始めとする多くの諸先輩が啓蒙と運動をなされました。そして今や、大手ハウスメーカーも「国産材」という売りメッセージを打ちだす時代になりました。CLTやバイオマス等の木材利用の動きも含め、まさに国産材ビジネスの第二世代へと突入しています。そこで私は、木材技術の持続可能性を、あくまで事業を行う経営力の視点で国産材ビジネスについて振り返ることから始めたいと思います。

 

 

■理念と利益
木材自給率が激減したのち、第一世代(ここ20年と定義する)では、何故国産材が増えてきたのでしょうか。①自然素材系デザインの浸透 ②環境啓蒙やNPO団体等の発達 ③保育から利用への林業政策の転換と拡充 ④乾燥技術の向上と流通整備 ⑤国産材利用工務店の営業力向上、といった点が主な理由であると考えます。「地元の木で家を作る」「持続可能な森林づくりと住宅づくり」等、任意団体の活動が全国的に広がってから10年以上経つでしょうか。物語性を過度につくったために理念重視へ偏り、資金繰りが悪く経営が続かなかった団体、あるいは、掲げた理念が虚構でしかなく、利益重視で営業力強化のみに走ってしまう事業団体もありました。技術を残すための顧客をいかに獲得するか、また、算出した利益をどう再配分するかという経営視点に欠けておりました。まず根本に「利益なき理念は寝言、利益なき理念は寝言」という言葉を信条にすることが必要なのです。

 

 

 

 

■強烈な原体験を持つこと。

経営にしろ、購買にしろ、原体験こそが行動の源泉であると考えています。今から15年前の2000年夏。大学院生だった私は1枚のパンフレットに出会い、地域づくりインターンという国交省(旧国土庁)の事業で奈良県川上村へ行きました。そこは、紀の川・吉野川源流の村であり、吉野林業の発祥の地だったのです。自然資源の持続的循環利用の模範となるべく吉野林業の理想と現実を体感したのです。

 

 

当時、川上村は「全国そまびと選手権大会」という林業のイベントを行っていましたが、市場の開拓に直結せず、疲弊感が漂っておりました。林業は大事だ!地域の活性化を目指せ!というものの利益が続かない現実は厳しく、「利益なき理念は寝言」という言葉を心に訴えPR活動に邁進していたのです。

 

林業界は、より設計士・工務店、より消費者へ直接アピールすべきだと産地ツアー等の事業を行い、啓蒙活動を促進しておりました。林業ツアーから得た原体験は、木材への愛着が湧くのみならず、将来の顧客層へのリーチが可能となります。そして、いわゆる美しい森林づくりがあることで、木材のカスケード利用を真剣に考え、設計の新しいアイディアやコスト削減と技術力向上にもつながります。設計技術・大工技術の前に大切なこと、それは、その背景を知ること、文化を知ること、生きる意味を真剣に啓蒙していかねばならないのです。

 

 

 

■QCD+物語性

啓蒙が進み、設計士工務店が林業人と共にデザインと快適性を付加し、本質を捉え時流に合った住宅を創造する。その上で「原体験」と「ストーリー(物語性)」を出さねばと、国産材ビジネスは、その差別化に奮闘しました。さらに、点から面へ、面から面への広がりを繋ぐためには、どうすれば良いか。連携を組むほどに大事となるのは、製造業の基本三大要素である品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)なのです。QCDの追求にかけて挑戦する山側の姿勢があるか否か。この基本に立ち返る必要性が見えてきたのです。私は、ここ10年、林業・木材業に特化した経営実践研究会(国産材ビジネススクール)を開いておりますが、このメンバーでは、乾燥方法の研究、自社企画、品質基準、情報発信について、追求を続けています。設計士・工務店にとって必要なQCDを明示化していくことから次の時代が見えてきたのです。

 

 

 

■国産材の第二世代の動きとして。

平成25年、先述の研究会メンバーが集って「clubプレミアム国産材」を名乗り、ジャパンホームショーへ共同出展しました。林業・製材業界が情報を発信し、木材産地の地域性をワインの産地のように仕立て、バイヤーにあたる木材流通店~設計・工務店に直接QCD+物語性をプレゼンしたのです。この試みは設計士・工務店の共感を呼び、確実に在来工法・無垢国産材の市場を点から面へと開拓していきました。

 

 

  

平成22,23年 産地共催交流セミナー(設計士・工務店と山側による面的連携を支援)

 

 

ジャパンホームショー

平成25年、Clubプレミアム国産材メンバーで、ジャパンホームショーへ出展

 

 

■目標林型と技術

 連携や交流を支援する中で、林業と木造住宅が近づくもう一つのポイントに、目標林型という言葉があります。かつて天竜で、当時80歳の山主からこう言われました。「いい山っていうのは、山主のコンセプトがある山だ!」と。

よき素材を活かすか否かは本来、マーケットに対する嗅覚により変化していくものです。それは、元来の需要があった樽材から、次第に高級部材として需要と供給が変化していった吉野杉のように。森林の風景とは、実は大工の技術、木材を利用する側が作り上げているということ。反対に、大工の技術とは、森林の風景を作ることを目的にするからこそ持続的発展が可能だと分かることでしょう。お互いの技術を知り合うことで、技術的発展が進むのです。

目標林型の森林(木材)に近づけるためには、地域に合った間伐(間引き)が必要となりますが、設計者工務店に「大トロだけ欲しい、ホルモンだけが欲しい」と言わしめない川上~川下の良い関係とは何か。いくつかの事例を紹介したいと思います。

 

 

 

■長期伐採木と短期伐採木(大径木と小径木)間伐材を利用。

~その「規格」と「企画」~

連携に必要なポイントとは、長期的なビジョンの下、長伐期の高齢樹と短期伐採の低齢樹をバランスよく使うことです。また、顧客が原体験で林業を知る「企画」とQCDの一致を求める「規格」の両方が重要です。前者の企画は、接客サービス、文化歴史、林業の深みを知るということ。後者の規格とは、街の設計士・工務店と林業との距離が遠すぎることによって、相互に無防備な規格設計の駆け引きを打破することです。「規格」の明示化と「企画」の表出化により、技術力を担保する経営サポートが可能となります。マーケットインやプロダクトアウト等といいますが、林業と木造技術の発展には双方の情報共有が重要で、これによって両者のコスト削減と顧客獲得ができるのです。

 

 

製材・加工

林業・原木

地域/材種

規格(QCD)

企画(物語性)

一般材

小径木

(樹齢40-60年前後)

象徴材

大径木

(樹齢100年以上)

体験、学び、地域文化、食べ物

影山木材㈱

㈱ソマウッド

富士山麓

駿河桧

4面スリット管柱

大黒柱

木魂祭

(神事、伐採体験)

川上産吉野材販売促進協同組合

吉野木材協同組合連合会

吉野・川上村

吉野杉

無節柱

平角/幅広フローリング

伐採見学ツアー

野地木材工業㈱

熊野杉

一般主要材

うねうね

熊野ツアー

林友ハウス工業㈱

㈱柳沢林業

信州松本

落葉松

T&Tパネル

[外壁用材]

階段材(柾目)

馬搬と里山体験

近隣協力

高野山

寺領森林組合

高野杉

高野檜

一般フローリング、柱

300年桧

(高野山中門)

森林セラピー

 

 

 

静岡県では、影山木材(株)(製材加工)が地元の新鋭林業会社、㈱ソマウッドと組み設計・工務店向けへ、施主が大黒柱を直接選び神事を行い、間近に伐採を見て購入するという企画(木魂祭)を実施しています。ここでの基本構造材は規格化された4面スリットの3.5-4寸の駿河桧で、管柱(小径木)約100本に対し、100年生の大黒柱1本という利用頻度です。

 

落葉松が多く植林されている信州エリアでは、㈱林友ハウス工業が、落葉松の50~60年生の材を利用し、T&Tパネル材という外壁材を規格化しました。この利用により間伐を促進し、いずれは樹齢100年の天然落葉松林を目標林型として管理しています。そして、大径木が育てば柾取りした階段材の製造が可能となるのです。これらは湘南地域の設計士・工務店のアイディアから規格化されました。現在この地域では、馬搬による出材や里山体験の企画化も充実しています。

 

野地木材工業㈱(三重県熊野地域)では、元々行っていた正角の品質基準強化に併せ、平角材の規格化を進めることで、設計連携の円滑化を実現しました。さらに、大径木化する杉材から木取りした30mm以上の浮造りフローリング材「うねうね」を商材として提供開始。一方、熊野文化を伝えるツアーは設計工務店から人気を評しています。

 

奈良県川上村においても、川上産吉野材販売促進協同組合と川上村役場が連携し、吉野地域の体験やツアーをはじめとしたPRを促進し、工務店の受注をサポートしています。一方、新たな規格材としては幅180mm長さ4mの新商品(幅広い)無垢フローリングを商品化し、工務店へ直受のうえ提供しています。

 

 

この平成27年、開創1200年を迎えた高野山では、1843年消失以来の再建となった中門は300年生の高野檜(高野霊木)が用いられました。総本山金剛峯寺が所有する山林は高野山寺領組合が管理し、一般材の直受体制を展開しています。霊験あらたかなる地を共に歩く、森林セラピー体験の企画も定期開催しており、是非ご参加いただきたいところです。

 

飛騨高山に拠点を据える株式会社井上工務店では、地域で大切に使われてきた飛騨五木を中心とした事業展開を行っています。これらはまさに、規格(QCD)と企画(物語性)の広がりによる、設計工務店の連携を点から面へと広げてきた事例であります。

 

 

 

 

■設計・工務店の経営支援も連携から始まる。

~技術を伝える→仕事を作る→子供(次世代)に継がせるために。~

仕事量がなくなれば技術がなくなるというのは、どの世界でも同じです。すなわち需要なきところに技術継承なし。技術の伝承には、師匠(技術)と仕事量(経営力)が必要なのです。技術のみがあっても伝わらない。ここで必要となるのが営業力や経営力なのです。だからこそ仕事(利益)の確保へと、事務屋である我々は裏方として整備を行っています。売れないものを売れるようにするマーケティングは要りません。ただし、森を知り、木を知り、家を知るということがぶつ切りにされて来た世界を、ビジネスとして連携させる。つまり、①オリジナルの設計や規格を確立すること ②原体験を重視した企画を実施し啓蒙すること ③そして、目標の森林に想いを馳せ林業をやり続けることなのです。

 

 

吉野林業中興の祖である土倉庄三郎は「利益の3分の1は国、3分の1は教育、3分の1は事業へ」と、自身の信条を掲げています。最近、林業側、工務店側が共に打合せを行っていた最中のこと、経営者がこのように語りました。「私の息子(中学生)に、この仕事、自信を持って継がせたいと思っている。」と、継承に込めた強い想い。これからの世代が次世代を生きていきたいものです。

 

 

 

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古川 大輔 Daisuke Furukawa

株式会社古川ちいきの総合研究所 代表取締役 / コンサルタント
twitter: @daisukefurukawa
blog: 地域再生・森林再生コンサルタント日記

 

新潟県生れ、東京都町田市育ち。大学院時代、全国の農山村地域を巡り、研究の道を捨て博士課程中退。28歳で社会人に。㈱船井総合研究所主任、㈱アミタ持続可能経済研究所客員主任研究員、㈱トビムシを経て独立し、㈱古川ちいきの総合研究所を設立。船井総研時代に「地域ブランド創造チーム」設立。以後、地域ブランド創造を切り口に、地域再生、森林再生に携わる。㈱トビムシでは、ニシアワー(森の学校)設立前の支援、高野山・高野霊木のプロデュース、経営実践研究会の実施などを行い、全国の林業・木材業・地域づくりに関わる支援実績、講演多数。奈良県川上村観光PRかみせ大使、高野山 金剛峯寺境内案内人でもある。

ニュース
投稿日:2017/03/01

【告知】(3/29)木のある暮らし展~旅する日本の森と産地~

 

このたび、Clubプレミアム国産材では

「木のある暮らし展~旅する日本の森と産地~」を開催します。

 

 

「その生き方が、プレミアム。」

9つの特別な木材産地が勢ぞろい。

ただの材木屋ではない彼らが、森とつながる豊かな暮らしとは何かを語りかけます。

9つの部屋をめぐれば、あなたの探していたプレミアムな暮らしにきっと出会える一日です。

 

■こんな方にピッタリ

~工務店・設計・インテリア関係者のみなさまへ~
~森とつながる地域づくりに関心のある方へ~
~「木」で新たなビジネスを創造したい方へ~

 


 

■開催日時:2017年3月29日(水)10:00~17:00

 

■会場:大阪市中央区高麗橋3-1-8カルボ高麗橋ビル1F 高麗橋BLACKBOX(淀屋橋駅から徒歩5分)

(会場詳細はこちらから:http://blackbox.osaka/rental-space-access.html

 

■参加無料・申込不要

 

■プログラム
①産地からの空間提案展示(常時展示)
建材のみならず、家具、インテリアも含めた「暮らし」の提案。
他にもユニークな仕掛けを携えて、9つの産地がやってきます。

 

②特別無料セミナー
「プレミアム国産材で工務店経営をプレミアム化するセミナー

プレミアム国産材をどのように活用すれば工務店のブランディングにつなげられるか、ポイントを伝授します。

午前の部:11:30-12:00
午後の部:16:30-17:00

講師:(株)古川ちいきの総合研究所 古川大輔

 

③トークショー「国産材LIVE!」(毎時開催)
プレミアム産地がいま、何を考え、企んでいるのか?
産地の声を軽快なトークでお届けします。

 

live

 

※カフェ・商談コーナーあり

※林業にちなんだ出張バー「林業BAR」のカフェメニューをお楽しみください。

 

 

■交流会
17:00~19:00(軽食付き・参加費2,000円
※当日受付でお申込、現金にて参加費をお支払いください。

 

■主催:Clubプレミアム国産材
(事務局(株)古川ちいきの総合研究所)

 

■出展産地

[Clubプレミアム国産材]【J1】
・㈱西粟倉・森の学校【岡山西粟倉】
・影山木材㈱【富士山麓】
・㈱山共【岐阜東白川】
・竹下木材㈲【石見出雲】
・ばうむ合同会社【土佐嶺北】
・一般社団法人吉野かわかみ社中【吉野川上】
・高野山寺領森林組合【高野山】
・ソマミチ【信州松本】
・飛騨五木㈱ 【飛騨高山】

 

【J2】
・木原木材店【兵庫播州】
・岩泉の明日の林業をつくる会【岩手岩泉】

・㈲平田木材店【福井高浜】

 

 

★Facebookイベントページも要チェック

https://www.facebook.com/events/309979639398755/

 

 

★申込み欄付きFAX用紙はこちらからダウンロードできます。

 

 

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過去の開催イベントに関するブログはこちらから

・第4回産地共催交流セミナー(2015年):https://club-premium-wood.jp/?p=837

・Japan Home & Building Show 2013(2013年):https://club-premium-wood.jp/?p=671

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会場写真

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